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Microsoft 365のデータ保護を比較──標準機能・Microsoft 365 Backup・365 Total Backupの違い

執筆者 Hornetsecurity / 05.11.2026 / ,

Microsoft 365のバックアップを検討すると、社内の稟議や上長への説明で、必ず2つの問いが出ます。「Microsoft 365の標準機能では足りないのか」と、「Microsoftが提供するバックアップサービスではだめなのか」です。この2つは別の問いです。

本稿では、標準機能、Microsoft 365 Backup、365 Total Backupの3つを並べて、両方の問いに答えます。社内の説明資料に転記できるよう、比較表と判断基準を中心にまとめました。なお、「標準機能」は、契約中のMicrosoft 365ライセンスで利用できる標準的な機能(ごみ箱、バージョン履歴、回復可能なアイテム、保持ポリシーなど)を指します。保持ポリシーなどは、プランや対象ユーザーに応じたライセンスが必要です。また、保持は、保全や検索を主な目的とする場合があり、大規模な業務復旧用のバックアップとは役割が異なります。Microsoft 365 Backupは、Microsoftが提供する有償のバックアップサービスとして、標準機能とは分けて書きます。記載は本稿執筆時点(2026年10月)の情報にもとづきます。

1. 結論:3つは「誰の、どの範囲の失敗を、どこから戻すか」が違う

3つの違いは、機能の多さではなく、「誰の、どの範囲の失敗を、どこから戻すか」にあります。

標準機能Microsoft 365 Backup365 Total Backup
保管場所元のデータと同じテナントの中Microsoft 365の信頼境界の内側Microsoftとは独立したHornetsecurityのデータセンター
守れる失敗利用者の誤操作を、一定期間だけ、自分で戻すExchange・SharePoint・OneDriveを、短い間隔の復元ポイントから、大規模に戻すバックアップの保管基盤と管理面が、Microsoft 365のテナントから分離されたコピーから戻す。Teamsチャットなども対象
費用の構造契約中のライセンスで利用できる従量課金ソリューション、ストレージ、サポートを料金に含む
表1 3つの違い(要点)
出典:Microsoft Learn、日本語サービスページ(365 Total Backup)をもとに整理。詳細は2章。

標準機能は、利用者の誤操作を、一定期間だけ、同じテナントの中で戻す仕組みです。Microsoft 365 Backupは、Microsoft 365の内側に、有償で大規模な復元ポイントを持つ仕組みです。365 Total Backupは、Microsoft 365の外側に、テナントの管理者権限から独立したコピーを持つ仕組みです。どれを選ぶか、あるいは組み合わせるかは、守りたいリスクで決まります。

2. 比較表

稟議資料に転記できるよう、比較項目を絞り、2つの表に分けました。金額は記載しません。費用は、構造の違いだけで比べます。

項目標準機能Microsoft 365 Backup(従量課金)365 Total Backup
費用契約中のライセンスで利用できる。保持ポリシーなどは、プランや対象ユーザーに応じたライセンスが必要保護するコンテンツの量に応じた従量課金。復元に追加料金はない。課金量には、保持中の削除済み・バージョンのデータも含まれるソリューション、ストレージ、24時間365日サポートを料金に含む
保管場所元のデータと同じテナントの中Microsoft 365の信頼境界の内側。現在のデータの所在地を維持Microsoftとは独立したHornetsecurityのデータセンター。保管リージョンを選択できる
対象仕組みごとに異なる(ごみ箱、バージョン履歴、回復可能なアイテム、保持ポリシー)Exchange Online、SharePoint、OneDriveメールボックス(インプレースアーカイブ含む)、Teamsチャット、Planner、OneNote、Entra IDのユーザーとグループ、OneDrive、SharePointドキュメントライブラリ
Teamsチャット保持ポリシーで保持・削除を設定できる(対象ライセンスが必要)対象外(Teamsのチャネルの、SharePoint上のファイルのみ)対象
復旧ウィンドウ(戻せる期間)ごみ箱は削除から93日。グループ関連のリソースは削除後30日。仕組みごとに上限がある3か月・6か月・1年・2年から選択(既定は1年)日本語サービスページに「容量無制限・期間無制限」と表記。保持ポリシーの対象は、メールボックス、OneDrive、SharePoint。Teamsチャットは、削除されたユーザー・グループのデータを一定期間後に消去する設定(パージ)のみ
表2 費用・保管場所・対象・復旧ウィンドウの比較
項目標準機能Microsoft 365 Backup(従量課金)365 Total Backup
復元ポイントの間隔バージョン履歴の設定によるOneDrive・SharePoint:直近2週間は10分単位、以降は週次。Exchange:10分単位(公式の表では52週間前まで)1日に複数回、自動でバックアップ
復元の粒度ファイル・アイテム単位(利用者自身でも可)サイト・アカウント・メールボックス単位。SharePoint・OneDriveは、管理者がファイル・フォルダー単位でも復元できる。Exchangeは検索によるアイテム単位個別ファイル単位。エンドユーザーによるセルフ復元(メールボックス、OneDrive、OneNote)
管理者権限との関係テナントの管理者権限の下にある。保持ロックを使っていない場合、管理者は保持期間を短縮・削除できるMicrosoft 365管理センターから操作。バックアップの保持は、Backupツールで定義したポリシーだけで決まり、Purviewの保持・削除ポリシーの影響を受けないバックアップ側の認証は、Microsoft 365のテナントと分離。ダブルチェック承認プロセス(Four-Eye Approval)を有効にすると、削除要求や保持設定の変更などに、第二管理者の承認が必要
削除・改ざんへの耐性保持ロックを適用した保持ポリシーは、管理者でも短縮・無効化できないMicrosoftの説明では、Backupツールの管理者が明示的に削除した場合を除き、バックアップは不変(追記型のストレージ)外部の第三者は削除・変更できない。削除できるのは、365 Total Backupの管理者アカウント(ダブルチェック承認を有効にしている場合は、第二管理者の承認が必要)
表3 復元・権限・削除への耐性の比較
出典:Microsoft Learn(Microsoft 365 Backupの概要・料金)、Microsoft 365 Backupのサービスページ、Microsoft 365メッセージセンター(MC1419799)、SharePointのデータ削除に関する文書、保持ロックに関する文書、365 Total Backup日本語サービスページ。

3. 標準機能で足りるケース

利用者の誤削除や上書きを、期間内に気づいて戻せる運用であれば、標準機能で足ります。契約済みプランの範囲で利用でき、利用者自身が元に戻せる点が強みです。

たとえば、SharePointでは、ごみ箱のアイテムは、元の場所から削除した時点から93日間残ります。バージョン履歴からは、以前のバージョンに戻せます。チームを含むMicrosoft 365グループに関しては、グループに属するサイトを復元する場合、サイト以外のグループのリソースは30日間しか保持されません。

限界は2つあります。1つは、期間に上限があり、期間を過ぎると戻せないことです。もう1つは、保存先も権限も、元のデータと同じテナントの中にあることです。保持ロックを適用していない保持ポリシーは、管理者が短縮や削除をできます。設定の誤りや、管理者権限の侵害の影響は、そのままデータに及びます。

4. Microsoft 365 Backupが適しているケース

Exchange・SharePoint・OneDriveを、短い間隔の復元ポイントから大規模に戻したい場合や、データをMicrosoft 365の外に出したくない場合に適しています。

Microsoftは、データはMicrosoft 365のデータの信頼境界の外に出ず、現在のデータの所在地を守ると説明しています。復旧ウィンドウは、3か月・6か月・1年・2年から選べます(既定は1年)。復元ポイントは、OneDriveとSharePointが直近2週間は10分単位、以降は週次、Exchangeが10分単位です。SharePointとOneDriveでは、管理者がファイルやフォルダーを選んで戻すことも、できるようになりました。

費用は、従量課金です。Microsoftは、Microsoft 365 Backupを、保護するSharePointまたはExchange Onlineのライセンスのほかに、ライセンスの要件がない、従量課金の単独のサービスとして提供しています。保護するデータ量が小さい組織では、従量課金のほうが合うことがあります。また、Microsoft 365 Backupの保持は、Backupツールで定義したポリシーだけで決まり、ツールの外で定義した保持・削除のポリシーの影響を受けません。保持ポリシーの設定の誤りが、バックアップには及ばない設計です。

一方で、対象は、Exchange Online、SharePoint、OneDriveに限られます。Teamsのチャットは対象ではなく、Teamsのチャネルに紐づくSharePointサイト上のファイルだけが対象です。また、保管場所も権限も、Microsoft 365の中にあります。

5. 365 Total Backupが適しているケース

バックアップの保管基盤と管理面を、Microsoft 365のテナントから分離したい場合や、Microsoft 365 Backupの対象に含まれないデータを守りたい場合に、有力な選択肢になります。

  • Teamsチャット、Planner、OneNote、Entra IDのユーザーとグループを守りたい
  • テナントの管理者権限が侵害された場合に備えて、バックアップの保管基盤と管理面を分離しておきたい
  • ファイル単位の復元や、エンドユーザー自身による復元が多い
  • 保持期間を、業務要件に合わせて設定したい(保持ポリシーの対象は、メールボックス、OneDrive、SharePoint。Teamsチャットは、パージのみ)。日本語サービスページには、「容量無制限・期間無制限」と表記されています
  • ストレージ容量による追加課金がない形で運用したい(実際の料金は、ライセンス数や契約条件による)

365 Total Backupは、Microsoftとは独立したHornetsecurityのデータセンターに保存され、バックアップ側の認証はMicrosoft 365のテナントと分離されています。復元の際は、認可されたMicrosoft 365との連携を使います。問うべきなのは、「バックアップをロックできるか」ではなく、「バックアップが侵害の範囲の外にあるか」です。なお、保持期間は、期間が過ぎたら自動で削除する管理の仕組みであり、期間中の削除を禁止するロックではありません。

6. 組み合わせという選択肢

標準機能は、どの選択肢でも土台として残ります。その上に何を足すかを、守りたいリスクで整理します。

守りたいリスク有力な候補要件により加えるもの
利用者の誤削除・上書き標準機能―
Exchange・SharePoint・OneDriveの、大規模な障害や攻撃からの復旧標準機能+Microsoft 365 Backup―
Teamsチャットなど、Microsoft 365 Backupの対象外のデータ標準機能365 Total Backup
テナントの管理者権限が侵害された場合―365 Total Backup
表4 守りたいリスクと選択肢

どれを選ぶかは、検知までにかかる時間、削除の規模、必要な復旧時間と復旧時点、保持ロックやFour-Eye Approvalの有効化によって変わります。Microsoft 365 Backupと365 Total Backupは、対象と保管基盤が異なるため、併用する構成も考えられます。その場合は、重複して保護するExchange・SharePoint・OneDriveの費用と運用負荷を評価して、どちらで何を守るかを決めます。

7. 選定のためのチェックリスト

選ぶときは、次の6つの観点で、3つの選択肢を点検します。

観点問い
① 守りたいデータの範囲Teams、Planner、Entra IDのユーザーとグループを含むか
② 保管場所バックアップが、Microsoft 365のテナントから分離されているか
③ 認証バックアップ側の認証が、テナントの管理者権限と分離されているか
④ 戻せる期間戻せる期間を、業務要件に合わせられるか
⑤ 復元の粒度ファイル単位か、サイト・メールボックス単位か。誰が復元するか
⑥ 費用の構造ライセンスに含まれるか、従量課金か、ストレージ込みか
表5 選定のためのチェックリスト

8. よくある質問

Microsoft 365の標準機能だけで、バックアップの代わりになりますか?

利用者の誤削除や上書きを、期間内に気づいて戻す用途には足ります。ただし、期間に上限があり、保存先も権限も同じテナントの中にあります。テナントの管理者権限の侵害や、設定の誤りには、別のコピーが必要になることがあります。

Microsoft 365 BackupでTeamsのチャットはバックアップできますか?

できません。Microsoftは、Teamsのチャネルに紐づくSharePointサイト上のファイルだけが対象と説明しています。

Microsoft 365 Backupは追加費用がかかりますか?

かかります。保護するデータ量に応じた従量課金で、Microsoft 365のライセンスには含まれません。

365 Total BackupはMicrosoft 365 Backupと併用できますか?

対象と保管基盤が異なるため、併用する構成も考えられます。保護するデータの範囲が重なるExchange・SharePoint・OneDriveについては、費用と運用負荷を評価して、どちらで何を守るかを決めてください。

9. まとめ

3つの違いは、機能の多さではなく、「誰の、どの範囲の失敗を、どこから戻すか」です。標準機能は、利用者の誤操作を戻す土台です。Microsoft 365 Backupは、Microsoft 365の内側で、大規模な復元ポイントを持つ仕組みです。365 Total Backupは、Microsoft 365の外側に、テナントの管理者権限から独立したコピーを持つ仕組みです。守りたいリスクから選んでください。

Microsoft 365の外側に、独立したコピーを持つ

365 Total Backup icon

Hornetsecurity(ホーネットセキュリティ)の365 Total Backupは、Teamsチャットを含むMicrosoft 365のデータを自動でバックアップするサービスです。バックアップは、Microsoftとは独立したHornetsecurityのデータセンターに保存されます。ソリューション、ストレージ、24時間365日のサポートが、料金に含まれます。

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