
Microsoft 365のデータ保護を比較──標準機能・Microsoft 365 Backup・365 Total Backupの違い
Microsoft 365のバックアップを検討すると、社内の稟議や上長への説明で、必ず2つの問いが出ます。「Microsoft 365の標準機能では足りないのか」と、「Microsoftが提供するバックアップサービスではだめなのか」です。この2つは別の問いです。
本稿では、標準機能、Microsoft 365 Backup、365 Total Backupの3つを並べて、両方の問いに答えます。社内の説明資料に転記できるよう、比較表と判断基準を中心にまとめました。なお、「標準機能」は、契約中のMicrosoft 365ライセンスで利用できる標準的な機能(ごみ箱、バージョン履歴、回復可能なアイテム、保持ポリシーなど)を指します。保持ポリシーなどは、プランや対象ユーザーに応じたライセンスが必要です。また、保持は、保全や検索を主な目的とする場合があり、大規模な業務復旧用のバックアップとは役割が異なります。Microsoft 365 Backupは、Microsoftが提供する有償のバックアップサービスとして、標準機能とは分けて書きます。記載は本稿執筆時点(2026年10月)の情報にもとづきます。
1. 結論:3つは「誰の、どの範囲の失敗を、どこから戻すか」が違う
3つの違いは、機能の多さではなく、「誰の、どの範囲の失敗を、どこから戻すか」にあります。
| 標準機能 | Microsoft 365 Backup | 365 Total Backup | |
|---|---|---|---|
| 保管場所 | 元のデータと同じテナントの中 | Microsoft 365の信頼境界の内側 | Microsoftとは独立したHornetsecurityのデータセンター |
| 守れる失敗 | 利用者の誤操作を、一定期間だけ、自分で戻す | Exchange・SharePoint・OneDriveを、短い間隔の復元ポイントから、大規模に戻す | バックアップの保管基盤と管理面が、Microsoft 365のテナントから分離されたコピーから戻す。Teamsチャットなども対象 |
| 費用の構造 | 契約中のライセンスで利用できる | 従量課金 | ソリューション、ストレージ、サポートを料金に含む |
出典:Microsoft Learn、日本語サービスページ(365 Total Backup)をもとに整理。詳細は2章。
標準機能は、利用者の誤操作を、一定期間だけ、同じテナントの中で戻す仕組みです。Microsoft 365 Backupは、Microsoft 365の内側に、有償で大規模な復元ポイントを持つ仕組みです。365 Total Backupは、Microsoft 365の外側に、テナントの管理者権限から独立したコピーを持つ仕組みです。どれを選ぶか、あるいは組み合わせるかは、守りたいリスクで決まります。
2. 比較表
稟議資料に転記できるよう、比較項目を絞り、2つの表に分けました。金額は記載しません。費用は、構造の違いだけで比べます。
| 項目 | 標準機能 | Microsoft 365 Backup(従量課金) | 365 Total Backup |
|---|---|---|---|
| 費用 | 契約中のライセンスで利用できる。保持ポリシーなどは、プランや対象ユーザーに応じたライセンスが必要 | 保護するコンテンツの量に応じた従量課金。復元に追加料金はない。課金量には、保持中の削除済み・バージョンのデータも含まれる | ソリューション、ストレージ、24時間365日サポートを料金に含む |
| 保管場所 | 元のデータと同じテナントの中 | Microsoft 365の信頼境界の内側。現在のデータの所在地を維持 | Microsoftとは独立したHornetsecurityのデータセンター。保管リージョンを選択できる |
| 対象 | 仕組みごとに異なる(ごみ箱、バージョン履歴、回復可能なアイテム、保持ポリシー) | Exchange Online、SharePoint、OneDrive | メールボックス(インプレースアーカイブ含む)、Teamsチャット、Planner、OneNote、Entra IDのユーザーとグループ、OneDrive、SharePointドキュメントライブラリ |
| Teamsチャット | 保持ポリシーで保持・削除を設定できる(対象ライセンスが必要) | 対象外(Teamsのチャネルの、SharePoint上のファイルのみ) | 対象 |
| 復旧ウィンドウ(戻せる期間) | ごみ箱は削除から93日。グループ関連のリソースは削除後30日。仕組みごとに上限がある | 3か月・6か月・1年・2年から選択(既定は1年) | 日本語サービスページに「容量無制限・期間無制限」と表記。保持ポリシーの対象は、メールボックス、OneDrive、SharePoint。Teamsチャットは、削除されたユーザー・グループのデータを一定期間後に消去する設定(パージ)のみ |
| 項目 | 標準機能 | Microsoft 365 Backup(従量課金) | 365 Total Backup |
|---|---|---|---|
| 復元ポイントの間隔 | バージョン履歴の設定による | OneDrive・SharePoint:直近2週間は10分単位、以降は週次。Exchange:10分単位(公式の表では52週間前まで) | 1日に複数回、自動でバックアップ |
| 復元の粒度 | ファイル・アイテム単位(利用者自身でも可) | サイト・アカウント・メールボックス単位。SharePoint・OneDriveは、管理者がファイル・フォルダー単位でも復元できる。Exchangeは検索によるアイテム単位 | 個別ファイル単位。エンドユーザーによるセルフ復元(メールボックス、OneDrive、OneNote) |
| 管理者権限との関係 | テナントの管理者権限の下にある。保持ロックを使っていない場合、管理者は保持期間を短縮・削除できる | Microsoft 365管理センターから操作。バックアップの保持は、Backupツールで定義したポリシーだけで決まり、Purviewの保持・削除ポリシーの影響を受けない | バックアップ側の認証は、Microsoft 365のテナントと分離。ダブルチェック承認プロセス(Four-Eye Approval)を有効にすると、削除要求や保持設定の変更などに、第二管理者の承認が必要 |
| 削除・改ざんへの耐性 | 保持ロックを適用した保持ポリシーは、管理者でも短縮・無効化できない | Microsoftの説明では、Backupツールの管理者が明示的に削除した場合を除き、バックアップは不変(追記型のストレージ) | 外部の第三者は削除・変更できない。削除できるのは、365 Total Backupの管理者アカウント(ダブルチェック承認を有効にしている場合は、第二管理者の承認が必要) |
出典:Microsoft Learn(Microsoft 365 Backupの概要・料金)、Microsoft 365 Backupのサービスページ、Microsoft 365メッセージセンター(MC1419799)、SharePointのデータ削除に関する文書、保持ロックに関する文書、365 Total Backup日本語サービスページ。
3. 標準機能で足りるケース
利用者の誤削除や上書きを、期間内に気づいて戻せる運用であれば、標準機能で足ります。契約済みプランの範囲で利用でき、利用者自身が元に戻せる点が強みです。
たとえば、SharePointでは、ごみ箱のアイテムは、元の場所から削除した時点から93日間残ります。バージョン履歴からは、以前のバージョンに戻せます。チームを含むMicrosoft 365グループに関しては、グループに属するサイトを復元する場合、サイト以外のグループのリソースは30日間しか保持されません。
限界は2つあります。1つは、期間に上限があり、期間を過ぎると戻せないことです。もう1つは、保存先も権限も、元のデータと同じテナントの中にあることです。保持ロックを適用していない保持ポリシーは、管理者が短縮や削除をできます。設定の誤りや、管理者権限の侵害の影響は、そのままデータに及びます。
4. Microsoft 365 Backupが適しているケース
Exchange・SharePoint・OneDriveを、短い間隔の復元ポイントから大規模に戻したい場合や、データをMicrosoft 365の外に出したくない場合に適しています。
Microsoftは、データはMicrosoft 365のデータの信頼境界の外に出ず、現在のデータの所在地を守ると説明しています。復旧ウィンドウは、3か月・6か月・1年・2年から選べます(既定は1年)。復元ポイントは、OneDriveとSharePointが直近2週間は10分単位、以降は週次、Exchangeが10分単位です。SharePointとOneDriveでは、管理者がファイルやフォルダーを選んで戻すことも、できるようになりました。
費用は、従量課金です。Microsoftは、Microsoft 365 Backupを、保護するSharePointまたはExchange Onlineのライセンスのほかに、ライセンスの要件がない、従量課金の単独のサービスとして提供しています。保護するデータ量が小さい組織では、従量課金のほうが合うことがあります。また、Microsoft 365 Backupの保持は、Backupツールで定義したポリシーだけで決まり、ツールの外で定義した保持・削除のポリシーの影響を受けません。保持ポリシーの設定の誤りが、バックアップには及ばない設計です。
一方で、対象は、Exchange Online、SharePoint、OneDriveに限られます。Teamsのチャットは対象ではなく、Teamsのチャネルに紐づくSharePointサイト上のファイルだけが対象です。また、保管場所も権限も、Microsoft 365の中にあります。
5. 365 Total Backupが適しているケース
バックアップの保管基盤と管理面を、Microsoft 365のテナントから分離したい場合や、Microsoft 365 Backupの対象に含まれないデータを守りたい場合に、有力な選択肢になります。
- Teamsチャット、Planner、OneNote、Entra IDのユーザーとグループを守りたい
- テナントの管理者権限が侵害された場合に備えて、バックアップの保管基盤と管理面を分離しておきたい
- ファイル単位の復元や、エンドユーザー自身による復元が多い
- 保持期間を、業務要件に合わせて設定したい(保持ポリシーの対象は、メールボックス、OneDrive、SharePoint。Teamsチャットは、パージのみ)。日本語サービスページには、「容量無制限・期間無制限」と表記されています
- ストレージ容量による追加課金がない形で運用したい(実際の料金は、ライセンス数や契約条件による)
365 Total Backupは、Microsoftとは独立したHornetsecurityのデータセンターに保存され、バックアップ側の認証はMicrosoft 365のテナントと分離されています。復元の際は、認可されたMicrosoft 365との連携を使います。問うべきなのは、「バックアップをロックできるか」ではなく、「バックアップが侵害の範囲の外にあるか」です。なお、保持期間は、期間が過ぎたら自動で削除する管理の仕組みであり、期間中の削除を禁止するロックではありません。
6. 組み合わせという選択肢
標準機能は、どの選択肢でも土台として残ります。その上に何を足すかを、守りたいリスクで整理します。
| 守りたいリスク | 有力な候補 | 要件により加えるもの |
|---|---|---|
| 利用者の誤削除・上書き | 標準機能 | ― |
| Exchange・SharePoint・OneDriveの、大規模な障害や攻撃からの復旧 | 標準機能+Microsoft 365 Backup | ― |
| Teamsチャットなど、Microsoft 365 Backupの対象外のデータ | 標準機能 | 365 Total Backup |
| テナントの管理者権限が侵害された場合 | ― | 365 Total Backup |
どれを選ぶかは、検知までにかかる時間、削除の規模、必要な復旧時間と復旧時点、保持ロックやFour-Eye Approvalの有効化によって変わります。Microsoft 365 Backupと365 Total Backupは、対象と保管基盤が異なるため、併用する構成も考えられます。その場合は、重複して保護するExchange・SharePoint・OneDriveの費用と運用負荷を評価して、どちらで何を守るかを決めます。
7. 選定のためのチェックリスト
選ぶときは、次の6つの観点で、3つの選択肢を点検します。
| 観点 | 問い |
|---|---|
| ① 守りたいデータの範囲 | Teams、Planner、Entra IDのユーザーとグループを含むか |
| ② 保管場所 | バックアップが、Microsoft 365のテナントから分離されているか |
| ③ 認証 | バックアップ側の認証が、テナントの管理者権限と分離されているか |
| ④ 戻せる期間 | 戻せる期間を、業務要件に合わせられるか |
| ⑤ 復元の粒度 | ファイル単位か、サイト・メールボックス単位か。誰が復元するか |
| ⑥ 費用の構造 | ライセンスに含まれるか、従量課金か、ストレージ込みか |
8. よくある質問
Microsoft 365の標準機能だけで、バックアップの代わりになりますか?
利用者の誤削除や上書きを、期間内に気づいて戻す用途には足ります。ただし、期間に上限があり、保存先も権限も同じテナントの中にあります。テナントの管理者権限の侵害や、設定の誤りには、別のコピーが必要になることがあります。
Microsoft 365 BackupでTeamsのチャットはバックアップできますか?
できません。Microsoftは、Teamsのチャネルに紐づくSharePointサイト上のファイルだけが対象と説明しています。
Microsoft 365 Backupは追加費用がかかりますか?
かかります。保護するデータ量に応じた従量課金で、Microsoft 365のライセンスには含まれません。
365 Total BackupはMicrosoft 365 Backupと併用できますか?
対象と保管基盤が異なるため、併用する構成も考えられます。保護するデータの範囲が重なるExchange・SharePoint・OneDriveについては、費用と運用負荷を評価して、どちらで何を守るかを決めてください。
9. まとめ
3つの違いは、機能の多さではなく、「誰の、どの範囲の失敗を、どこから戻すか」です。標準機能は、利用者の誤操作を戻す土台です。Microsoft 365 Backupは、Microsoft 365の内側で、大規模な復元ポイントを持つ仕組みです。365 Total Backupは、Microsoft 365の外側に、テナントの管理者権限から独立したコピーを持つ仕組みです。守りたいリスクから選んでください。
Microsoft 365の外側に、独立したコピーを持つ

Hornetsecurity(ホーネットセキュリティ)の365 Total Backupは、Teamsチャットを含むMicrosoft 365のデータを自動でバックアップするサービスです。バックアップは、Microsoftとは独立したHornetsecurityのデータセンターに保存されます。ソリューション、ストレージ、24時間365日のサポートが、料金に含まれます。
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