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クリスマス詐欺:悪賢いハッカーが 組織と買い物客を標的にする方法

執筆者 Hornetsecurity / 22.12.2025 /
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小売業者、ITチーム、そして「今年を良い形で締めくくりたい」と考えるすべての人にとって、12月は少し【変わった】時期です。記録的な売上、正念場を迎えるプロジェクト、そして収拾のつかない受信トレイが同時に押し寄せます。顧客はお得なセールを探し、従業員は家族の予定と締切に追われる一方で、攻撃者たちは静かに自分たちの「サイバー・クリスマス」を準備しています。なぜなら、1年の中でも特にクリスマス詐欺が【儲かる】時期だからです。

ここでは、なぜ12月にサイバー攻撃が増加するのかを解説し、「12のクリスマス詐欺」を紹介します。そして、Microsoft 365環境を運用している企業から、ソファに座って安全に買い物をしたい個人まで、ホリデーシーズン中に実践できる具体的なセキュリティ対策を提示します。特に、業務用受信トレイに届くクリスマス向け標的型フィッシングを回避するためのポイントにも触れていきます。

なぜホリデーシーズンにサイバー攻撃が急増するのか

ホリデーシーズン中にサイバー攻撃が増えるのは、複数のリスク要因が同時に重なるためです。

  • 人は気が散り、急いで判断しがちになる
    年末特有の気忙しさから、従業員はメールや承認内容を流し読みしがちになります。その結果、フィッシング、偽請求書、その他のソーシャルエンジニアリング攻撃に引っかかりやすくなります。

  • 業務端末でのオンラインショッピングが増える
    従業員は、会社支給のノートPCやスマートフォンを使って、私的な買い物、配送確認、アカウント登録を行います。その結果、注文確認や配送通知のメールが大量に届き、攻撃者はそれを装って悪意あるリンクや添付ファイルを紛れ込ませやすくなります。

  • セキュリティチームの人員不足
    休暇期間中、IT部門やSOCは最小限の体制で運用されることが多く、パッチ適用やアラート調査の遅延が発生します。これにより、攻撃者が成功するまでの猶予が広がり、インシデントが深刻化しやすくなります。

  • 攻撃者によるAIと自動化の活用
    サイバー犯罪者はAIを悪用して、地域や言語に違和感の少ない説得力あるフィッシングメールを大量に生成します。さらに、MFAコードやセッションクッキーを窃取できる最新のフィッシングキットと組み合わせることで、詐欺は通常の業務連絡のように見えるようになります。

  • クラウド攻撃対象領域の拡大
    ハイブリッドワークの普及と、Outlook、Teams、SharePoint、モバイルアプリ、SaaSの多用により、侵入口は大幅に増えています。そのため、「継続的な検証」「最小権限」「強固な復旧計画」といったゼロトラスト原則が、「サイバー・クリスマス」を乗り切るために不可欠となっています。

12のクリスマス詐欺

「12のクリスマス詐欺(12 Scams of Christmas)」という表現は、注意喚起のためのキャッチフレーズとして使われ始めましたが、的確であるがゆえに定着しました。毎年同じパターンが繰り返され、見た目のブランドや使われるツールだけが進化しているのです。多くのクリスマス詐欺は、メール、クラウドアカウント、決済フローに対する信頼を悪用するものであり、これは企業や消費者が最も依存している経路でもあります。

偽の注文確認・配送通知 

とてもおなじみな手口です。著名な配送業者やECサイトを装い、「配達に失敗しました」「通関手数料の支払いが必要です」「アカウントに問題があります」といった内容のメールやSMSが届きます。正規の追跡ページに見せかけたリンクをクリックすると、フィッシングサイトやマルウェア配布ページへ誘導されます。

ホリデーシーズンは複数の荷物を待っている人が多く、経験豊富なユーザーであっても、ついクリックしてしまいがちです。

fake order notifications

チャリティを装ったクリスマス・フィッシング詐欺

christmas charity scams

企業への影響は、従業員が業務用メールアドレスで買い物をしたり、会社支給端末で偽の配送通知を開いた場合に拡大します。1つのアカウントが侵害されるだけで、Microsoft 365テナント全体へ横展開される可能性があります。

12月は人々の善意が高まる時期です。攻撃者はそれを利用し、有名な慈善団体や緊急災害支援を装ったフィッシングメールを大量に送信します。感情に訴える文言や期限を強調する表現で、偽の寄付ページへ誘導し、見慣れたロゴやデザインを使って信頼感を演出します。

これらの攻撃は個人のクレジットカード情報を盗むだけでなく、「企業としての寄付」や偽の協賛請求書といった形で法人を狙うこともあります。詐欺を避ける最善の方法は、メール内のリンクを使わず、慈善団体の公式サイトを直接確認して寄付を行うことです。

ギフトカード詐欺/「CEOからの緊急依頼」詐欺

ビジネスメール詐欺(BEC)はホリデーシーズンでも止まりません。むしろ、経営層を装い、「取引先向け」「社内イベント用」としてギフトカードを至急購入するよう指示する詐欺が増加します。購入されたギフトカードは即座に換金され、攻撃者は姿を消します。

これらの詐欺は、「権威」「緊急性」「もっともらしいクリスマスの理由」を巧妙に組み合わせて成立します。明確な承認プロセスと、Teamsや電話など第二の連絡手段による確認が、最も有効な対策です。

gift card fraud

侵害されたホリデー eカードや添付ファイル 

holiday e cards

デジタルのクリスマスカードは心温まるものですが、悪意あるリンクやペイロードを隠すための格好の口実にもなります。偽のカード通知や「ホリデー写真集」を装ったメールには、マルウェアを含むアーカイブや、ドライブバイダウンロードサイトへのリンクが仕込まれていることがあります。

業務端末で開封されると、楽しげなスクリーンセーバーが侵入の第一段階となる可能性があります。最新のメールセキュリティはサンドボックスで検知できますが、想定外の送信元からのメールは、開く前に確認する意識が重要です。

中間者攻撃キットによるアカウント乗っ取り

中間者攻撃(Attacker-in-the-middle)型のフィッシングキットは、被害者と正規サービスの間に割り込み、パスワード、ワンタイムコード、セッションクッキーを盗み取ります。ホリデーシーズン中は、偽のショッピング通知や配送メール、ボーナス支払いを装って、偽ログインページへ誘導します。

一度有効なセッションを奪われると、多要素認証を回避され、メール、クラウドストレージ、連携サービスへアクセスされます。その先にあるのは、内部不正やデータ窃取です。

account takeover

請求書を装った悪意あるTXT/DOC添付ファイル 

txt and doc attachments

Hornetsecurityのサイバーセキュリティレポートでは、TXTやDOCファイルが新たなマルウェア配布手段として悪用されている点が指摘されています。年末の慌ただしさの中で、偽の請求書や注文概要、配送書類は非常に見分けにくい存在です。

従来型の実行ファイルのみを対象にしたフィルタでは、これらの形式はすり抜けてしまいます。サンドボックスやCDR(無害化・再構築)技術が有効です。

「安すぎる」偽ショッピングサイト 

12月になると、実在ブランドを精巧に模倣した偽ECサイトが出現します。悪意ある広告や検索結果操作によって誘導され、人気商品を期間限定の破格で販売しているように見せかけ、カード情報や個人情報を収集した後、短期間で姿を消します。

fake shopping sites

SNS上の偽プレゼント企画・インフルエンサーなりすまし 

influencer impersonation

SNSでは、ブランドやインフルエンサーを装った偽アカウントが「豪華クリスマスプレゼント」や割引コードを宣伝します。応募のためにリンクを踏ませ、個人情報を入力させたり、認証情報を収集するアプリをインストールさせたりします。

従業員には、業務用メールアドレスや端末を使ってSNSキャンペーンに登録しないよう周知することが重要です。

ホリデーシーズンのスミッシング(SMS詐欺)

ホリデーシーズン中は、SMSを使った詐欺も増加します。偽の配送通知、銀行アラート、「在庫切れのため再確認」といったメッセージには、短縮・難読化されたリンクが含まれ、小さな画面では確認が困難です。

リンクをタップすると、自動的にログインページが開いたり、カード情報の入力を求められたりします。SMSもメールと同様に警戒し、公式アプリやブックマークからアクセスする習慣が重要です。

smishing scams

侵害されたコラボレーションリンクや共有ドライブ 

compromised collaboration links

SharePoint、OneDrive、Teams などのクラウド共有リンクが悪用されるケースも増えています。「更新されたクリスマスシフト表」「ホリデーキャンペーン素材」といった無害に見えるリンクが、実は侵害されたテナント上の悪意あるファイルやフィッシングページであることがあります。

信頼する同僚や取引先からのリンクに見えるため、無意識にサインインやアクセス許可を与えてしまいがちです。外部共有ポリシーの厳格化とアクセス権限の監視が不可欠です。

ランサムウェアが仕込まれた「お楽しみ系」ダウンロード

無料の壁紙、スクリーンセーバー、ブラウザ拡張、ゲームなどには、ローダーやリモートアクセスツールが仕込まれていることがあります。「ちょっとした楽しみ」という油断を突いて侵入し、その後ランサムウェア展開や認証情報窃取に使われます。

侵入後は、これらのツールがランサムウェアの展開、ブラウザに保存されたパスワードの窃取、あるいはより機密性の高いシステムへの横展開に悪用される可能性があります。アプリケーション制御とローカル管理者権限の制限が、このリスクを大きく下げます。

festive downloads

ベンダー・サプライチェーンを狙った年末攻撃

supply chain xmas attack

防御が堅い企業ほど、攻撃者は小規模な取引先を踏み台にします。12月は給与計算会社やマーケティング代理店などを狙い、正規のメールスレッドを乗っ取り、支払先変更やマルウェアを注入します。

サプライチェーンをテーマにしたクリスマス攻撃キャンペーンは、正当な関係や進行中のプロジェクトを悪用するため、発見が難しい場合があります。重要な確認事項には、銀行口座情報の変更確認や、第三者アカウントの異常行動の監視が含まれます。

ホリデーシーズンのサイバーセキュリティ:実践的な対策 

ホリデーシーズンの脅威は克服不可能ではありません。完璧を目指すのではなく、「レジリエンス(回復力)」を高めることが目的です。適切な技術選定、明確なプロセス、継続的な教育を組み合わせることで、クリスマス詐欺の影響を大きく減らせます。

メールとコラボレーションの悪用を防ぐ

メールは依然として最大の侵入口です。シグネチャ検知とAI分析を組み合わせた多層防御により、ユーザーに届く前に悪意あるリンク、TXT/DOC添付、中間者攻撃を防げます。

さらに、短時間・高頻度のセキュリティ意識向上トレーニングを行うことで、Outlook、Teams、個人メールに潜む罠を見抜けるようになります。

不変バックアップと訓練された対応で回復力を高める

ランサムウェア対策として、Microsoft 365を含む重要システムの不変バックアップは必須です。バックアップは本番環境から論理的に分離し、改ざん防止を施し、定期的に復元テストを行う必要があります。

また、休暇前にインシデント対応計画を訓練しておくことも重要です。クリスマスイブに誰が初動対応するのか、メールが使えない場合の連絡手段は何か。訓練によって、計画は「使える対応力」になります。

クリスマス詐欺に一年中備える

12月が特別に感じられるだけで、クリスマス詐欺は通年型攻撃の「季節的な顔」に過ぎません。税務シーズン、大型スポーツイベント、セール時期など、同じ手法は形を変えて繰り返されます。

最も優れた組織は、ホリデーシーズンのセキュリティを単発の対策ではなく、Microsoft 365を中心とした多層防御、強固なID管理、不変バックアップ、継続的なセキュリティ教育を含む包括的なレジリエンス戦略として捉えています。